心が迷ったときの処方箋 「損得」で生きるか、「心根」で生きるか―論語が教えてくれる真の豊かさ 大人の器を育てる「義」と「利」生き方 人間関係

はじめに

日々の暮らしや仕事の中で、私たちは常に「どちらを選べばいいのだろう」という選択を迫られています。そんなとき、皆さんは何を基準に答えを出しているでしょうか。

有宮里夏は常に『論語』です。

進むべき道に迷ったとき、約2500年の時を超えて、私たちの心にピシッと一本の軸を通してくれる。それが『論語』です。

『論語』は、中国の古代の思想家・孔子とその弟子たちの対話をまとめた語録です。難解な学問のように思えるかもしれませんが、その本質は「一人の人間として、どうすれば周りと調和しながら、凛として幸せに生きられるか」という、非常に実践的な心のレッスン書です。

今回は、数ある論語の言葉の中でも、現代を生きる私たちが特に胸に留めておきたい、大好きな里仁(りじん)編の一節をご紹介します。

「君子は義に諭り、小人は利に諭る」 (くんしは ぎにさとり、しょうじんは りにさとる)

この言葉の深層にある「義と利」、そして「大人の生き方」について、紐解いていきましょう。

1. 「義」と「利」――あなたが大切にしている物差しはどちら?

この言葉に出てくる「義(ぎ)」と「利(り)」は、私たちが物事を判断するときの「2つの物差し」を表しています。

  • 「義」とは: 人間として通すべき筋道であり、「何が正しいか」「どう生きるのが美しいか」という内なる美学です。

  • 「利」とは: 自分にとって都合が良いか、損をしないか、得をするかという「損得勘定」です。

孔子は、目の前の出来事に対して、常に「人として正しいか(義)」を基準にパッと気づいて動ける人を「君子」、自分の「損得(利)」ばかりに気を取られて動く人を「小人」と呼びました。

決して「お金や利益が悪い」と言っているのではありません。「利」ばかりが先立ってしまうと、目先の欲に目がくらみ、本当に大切なものを見失ってしまうという人間の弱さを、優しく、しかし鋭く諭してくれているのです。

2. 「大人(君子)」と「小人」の違い

論語でいう「君子(くんし)」とは、地位が高い人のことではなく、徳を磨こうと努める「成熟した大人」のこと。対する「小人(しょうじん)」とは、器の小さな「未熟な人」を指します。

この両者の最大の違いは、「意識の矢印がどこを向いているか」です。

小人の矢印は、常に「自分」に向いています。「私が損をしないか」「私を認めてほしい」という思いが強いため、周りの人を思いやることができません。 一方で、君子(大人)の矢印は「循環」に向いています。全体にとって何が正しいか、どうすれば調和が生まれるかを考えます。

私たちが「あの人は器が大きいな」と感じる大人は、例外なく、自分を少し横に置いて、目の前の人や社会のために動ける「義」の人なのです。

3. 「仁」と「徳」――温かい心と、それを支える背骨

では、どうすれば私たちは「小人」から脱却し、器の大きな「大人」へと成長できるのでしょうか。ここで大切になるのが「仁(じん)」と「徳(とく)」という概念です。

『論語』の最高の徳目である「仁」とは、他者を思いやる「しみじみとしたどんな人も、どんなことも受け入れ包み込む温かい心」のこと。

優しさや思いやり(仁)が心の根底にあって初めて、私たちは他者のために行動したいという「義(正しさ)」を持つことができます。そして、その「仁」や「義」が日々の行動として積み重なり、その人の内側から滲み出る品格となったものを「徳」と呼びます。

「仁」という温かいスープを、「義」というピシッと通った背骨(器)が支えている。この2つが揃って初めて、ブレない大人の「徳」が完成するのです。

4. 日常のなかに潜む「義」と「利」の選択

この教えは、私たちの日常にそのまま当てはまります。

例えば、ビジネスにおいて「これを売れば今月の売上(利)は上がるけれど、本当にお客様のため(義)になるだろうか?」と立ち止まること。 あるいは人間関係で、「誰も見ていないけれど、ここは私が引き受けよう(義)」と動くのか、「面倒だから誰かがやるのを待とう(利)」とするのか。

私たちは毎日、小さな「義」と「利」の選択を何十回も繰り返しています。その選択の積み重ねが、私たちの「器」を形作っていくのです。

5. 「義」を基準に生きると、本当の豊かさが巡ってくる

皮肉なことに、「利(損得)」ばかりを追いかけていると、一時的には得をしたように見えても、長期的な信頼や本当の安心感は得られません。

逆に、「義(人としての美学)」を基準に生きていると、周囲から「あの人は信頼できる」という揺るぎない評価が生まれます。感謝の言葉が集まり、最終的には、必要なご縁や経済的な豊かさも、後から自然と循環して巡ってくるようになります。

「義を先にして利を後にする」。これこそが、人生を根底から豊かにする最大の秘訣なのです。

まとめ

「君子は義に諭り、小人は利に諭る」 この言葉は、私たちを責めるものではなく、「いつでも生き方は変えられるよ」と進むべき方角を指し示してくれる北極星=気学の元のような存在です。

心がブレそうになったとき、この言葉をそっと心の中で唱えてみてください。それだけで、私たちの内なる背骨がピンと伸び、心地よい「和」のエネルギーが周りに広がり始めるはずです。

大人の器を育てる「心の振り返りチェックリスト」

今日一日の終わりに、あるいは大切な決断をするときに、ぜひこの5つの問いで胸に手を当ててみてください。

  • [ ] 1. 「損得」ではなく、「人として美しいか(義)」で選ぼうとしていますか?

  • [ ] 2. 周りの人に「わかってほしい」と求めるより、まず自分が相手を理解しようと努めましたか?

  • [ ] 3. 目の前の人や出来事に対して、計算ではなく、誠実な心(仁)で向き合えているでしょうか。

  • [ ] 4. うまくいかないことを誰かのせいにせず、自分の役目(土台作り)に集中できていますか?

  • [ ] 5. 間違いや視野の狭さに気づいたとき、プライドを捨てて「すぐ改める」素直さを持てたでしょうか。

読者様へのメッセージ

私たちは完璧ではありません。時には「損をしたくないな」「自分をわかってほしい」と小人の心が顔を出すこともあります。それは人間として、ごく自然なことです。

大切なのは、そんな自分に気づいたとき、「おっと、矢印が自分に向いていたな」と優しく軌道修正すること。

まずは、あなたの一番身近な場所――家庭や目の前の小さなお役目を丁寧に調え、そこから世の中のためにできる「義」の実践を、一つずつ始めてみませんか?

その順番さえ間違えなければ、あなたの人生には必ず、調和に満ちた本当の豊かさが巡ってきます。

あなたの毎日が、温かい徳の光で満たされますように。

心根成長塾 有宮里夏

有宮里夏スタイル気学は実践気学です

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